第十五試合:海外武者修行
<前置き>
これは発行部数9000部を誇る夕刊プロレスというメールマガジンに「KING OF SPORTS」というタイトルで不定期連載しているコラムです。ここにアップするように多少の手直しが入る可能性もありますが。
</前置き>
日本に2+1(+1)団体しか無かった頃、どの団体も新弟子を卒業し、若手と呼ばれるようになった選手を海外に送ることが多かった。ある者は期待されてエリートコースを歩むために、有名レスラーやコーチの指導を受け、海外での試合経験を積み、場合によってはタイトルの一つも持って帰って来た。かたやこのまま日本にいても花の咲きそうにない選手を無期限で海外遠征に出した。そのまま消えてしまう者、イメージチェンジに成功し、華々しく帰国する者、他団体に上る者、そのまま定着してしまう者。
当時、プロレスにはいくつかの極があった。一つは当然アメリカ。一つはルチャ・リブレの国メキシコ。そしてまだキャッチの伝統が残るヨーロッパ。忘れては行けないのが独自の色を持っていたカナダ、カルガリー。
アメリカのプロレスは変質した。全体的に大型化したメジャー団体のトップ候補生が行くにはメキシコは小さすぎる。カルガリーエリアはもうない。ヨーロッパも弱体化した。このご時世、海外遠征に行ったところで大化けするのは難しいと思われている。
#中西、永田、西村がいい例。
全日に至っては海外遠征未経験組が頂点に上りつめた。遠征するより国内でもまれた方が成長する、とでもいうように。しかし新日では明暗がはっきりと分かれている。三銃士と呼ばれた時代は終わり、会社の持ち上げに乗り切れない健介も落ちた。今や蝶野、武藤の2トップ状態。この二人は海外遠征で成果をあげた二人だ。武藤は言うまでもなくグレート・ムタとしてNWA/WCWのトップに上り詰めた。蝶野はマイナー団体とはいえWWA(だっけ?)のタイトルを取り、十分な成果を上げた。橋本って海外で何してたの?健介だってカルガリーにいたらしいってことぐらいしかしらない。
今のアメリカンプロレスを見ていて海外武者修行は無駄だと思う人も多いだろう。でもそれは違う。プロレスというのは奥が深い。U系を評して馬場さんが言った「あれもプロレス」という言葉が真実なのだ。”今の”アメプロもプロレスなら、U系もプロレス。U系、そして今の格闘技ブームなんてものは、猪木のプロレスの一部分を拡大解釈したものにすぎない。猪木に対して馬場のプロレスこそがアメリカンプロレスだという見方もあるが、そうは思えない。昔のビデオなんて見てると馬場の方がシュートな試合が多い。足殺しなら足殺しをねちねちとやってたりね。猪木の魅せるプロレス、そしてシリーズを通したドラマ作り、こっちのほうがエンターテイメント性の高いプロレスだ。
蝶野は良く負ける。最近だと良くタッグマッチでフォールを奪われたりする。それを持って蝶野は弱い、という人がいる。小島や天山が良く吠えてるよね。大仁田にも勝てなかったと。では猪木は無敗だったか?そんなことはない。シリーズ緒戦で新外国人選手にクリーンに勝つことはまずなかった。シリーズ最後まではらはらさせ、最終戦タイトルマッチはなんとか防衛した。そうやってファンを楽しませてきたのだ。そうすることで外人選手の商品価値も上がる。逆に相手の商品価値を考えない試合をすることもある。ストロング小林戦は名勝負だが、その後の彼のポジションは決して恵まれたものではなかったし、思い出深いのが新日離脱が決まった最終戦、ビガロに対するお仕置きのような攻撃は目に焼き付いている。
蝶野は電流爆破の上で大仁田と引き分けることにより、自分の株を落とすことなく大仁田の商品価値を維持した。価値のない中牧との試合と比べればよくわかる。今回、武藤はなんだかんだと引っ張りながら、結局は大仁田の価値を認め、その策に乗りムタを復活させる。橋本は折角用意してくれた復活の花道天龍戦でドラマを作れなかった。健介は。。。何やってるの?
プロレスとは殺伐とした殺しあいではない。いかにドラマを作れるか、そして相手に怪我をさせず、自分も怪我をしない範囲を守り、お互いを尊重しあってストーリーを構成していかなければならない。その能力を身につける、または磨くために、海外遠征は今でも必要なのではないかと思う。小島は根っからのプロレスファンだから、結構いけてるのだが、中西あたり、もう一回ちゃんとやり直した方がいい。金本、高岩もメキシコかWCWクルーザー級あたりでシリーズというものの大切さ、相手を壊さないで適度に負けるということを勉強したほうがいい。
強いだけではやっていけないのがプロレスラー。ゴッチはどうだった?ローラン・ボックは?大仁田は何故客を呼べる?フレアーは何故未だにトップにいるんだ?そういうことを勉強しなおさないといけないレスラーが多い。商品価値のある選手を嗅ぎ分け、その選手と戦う、もしくは組む。そしてお互いの商品価値をあげていく。そういったこともできなくてはいけない。nWoブランドを活用し、大仁田、ドン・フライというすさまじく強烈な個性を持つ二人を抱き込める。これが蝶野の凄さだ。
今、新日、全日の若手を卒業したクラスの選手、層はかなり厚い。ここでくすぶってるぐらいなら、もう一度ちゃんと海外遠征してみないか。本当に大化けして、トップになって帰って来いよ。
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