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2007/12/09

GT煩方Kenne助 第2回 横浜の『L』

<Kenneth.Kです>

その日、Kenne助は気分が優れずにいた。

ここのところの負けがこんでいる上に

一昨日の夕餉の際につまんでいた丸宗田の刺身が体に合わなかったのか

腕と言わず、顔と言わず、疱瘡の如き様を呈し、

腹痛を伴う苦しみに見舞われた。

おかげで昨夜は日課としているノミ屋街散策に出られなかった。

今夜はその憂さを晴らすべく、出かけたものの一向に集中の出来ぬKenne助であった。

『ちきしょうめ、このオレが魚で当たるたぁ、おもなわかったぜ。

舞妓のおりっちゃんもここんとこ、口をきいてくんねぇしなぁ。

良くねぇことが続いていけねぇや。』

誰に聞こえるでなく毒づきながら歩くKenne助はいささかやつれたようでもあった。

こんな日ぁ、あそこだな。こうなったら徹底的に堕ちてやらぁ。

そう考えたKenne助は橋を渡り、東急諸手の裏通りへと姿を消す。

得玲塀多阿に身を預け四階へ。

扉をくぐると店の中は足元もおぼつかぬほどの暗さであった。

その上、胴夏盤にて曲を奏でているため

店になれていいても大抵のものは立ち尽くしてしまう。

しかし、そこはKenne助、与太者が故の鋭さか

夜の匂いだけは敏感に感じ取りなんのためらいもなく闇を進み

明かりの灯る止まり木に腰を落ち着ける

『久しぶりだな。Kenne助。てっきり死んだもんだと思っていたが』

『けっ、縁起でもねぇことぬかすんじゃねぇや。陣戸肉くんな。』

コリンズグラスに大ぶりのキューブアイスを2つ。

バースプーンでグラスが汗をかくまで氷を回したら一旦水を切る。

そこへ豪丼を注ぐ。

六分の一切りの螺居夢でグラスの縁を左右に半周ずつ拭ってから

絞ってグラスと氷の間へ。

それから洲上布素の戸肉を適宜。

グラスをKenne助の前へ。

『はいよ、おまっとうさん。』

バーテンダーが言い終わるが早いか

Kenne助はグラスを掴み口に運ぶ。

『む。これは

これは・・・

これは・・・

これはいか、

これはいかねぬ。』

Kenne助は顔を歪めながら言葉にした。

どうしても陣戸肉であるだけで八十点を与えてしまう

Kenne助のだらしなさではいかぬと言うのには

あまりにも険しい道のりであるということであろう。

苦渋の中で生まれた言葉であるのは想像に難くない。

平蔵殿の如き、愛するが故の厳しさを持てずにいるのが

Kenne助の青いところだ。

螺居夢でグラスを拭いたため唇はべとつくが風味が強まる。

戸肉を入れる前に螺居夢を絞っているのでステアが少なくなる。

『ふむ、炭酸が強く出来るわけだな。

爽やかさがあがるわけだ。』

ふむ、相変わらずこの店もやりやがる。

だが今のおれにゃぁ、爽やか過ぎる。

おれぁ、どっぷり堕ちにきたんだ。

『おう、すまねえが、胴夏盤を選ばせてくんな。』

『へい、何をおかけしやしょう。』

『備理意如得瑠の比阿野男でたのまぁ。戸肉安堵陣~♪ってのな。』

『へぇ。かしこまりましてございます。』

陣戸肉を傾けながら止まり木に身を預け

如得瑠に浸るKenne助の姿はこころもち覇気のなさを感じさせた。

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