仙台旅行2008年(通算1回目)'08 12/05(Fri)その3深夜編 「GT煩方Kenne助 第3回 仙台の『a』」
<Kenneth.Kです>
『つらい旅だぜ。』
勾当台公園の駅におりたKenne助は呟いた。
自然坊の料理と酒に不満があったわけではないが
GT煩方(うるさがた)の初の任を全うするべく
バーへ向かわねばならぬ自分の身を呪っていた。
『つらい旅だぜ。』
もう一度Kenne助は呟いた。
冬の仙台、寒空、夜、繁華街、一人旅、そしてトレンチコート。
なんとも「それっぽい」ではないか。
これでこそお気に入りのトレンチコートを着てきたかいがあるというものである。
目指している店は地下にあった。
階段を下りると店のものとおぼしき若い男が出ている。
『主か』
『いえ、あっしは丁稚でごぜぇますだ。』
『先ほどのお電話の・・・』
『そうだ、なにぶん慣れぬ土地ゆえ、電話させてもらった。入らせてもらうぞ。』
『へぇ、どうぞ。どうぞ、いらっしぇ~い。』
『むぅ、これは』
5人程度座れるカウンターとテーブルが一つの洒落た店だが
テーブルに団体が入っている。
おまけにタバコのにおいが充満している。
タバコの苦手なKenne助にとってはつらいが
団体客はもうじき帰るようなのでここはこらえることとする。
『なにになせぇますだ』
『うむ、陣戸肉をひとつもらおうか』
すると舌彼のボトルがカウンターに置かれた。
グラスはいささか細いようだ。
むぅ、なぜ茶こしが出るのだ。
茶こしの上からライムを絞っている。
ふむ、目新しくはあるな。
ライムの身の入らぬ、
いささか色味にかける印象を持つ
陣戸肉が運ばれてきた。
すかさずに一口。
これはいけてしまうな。
久しぶりの舌彼の香りが新鮮だったのであろう。
『こちらを熱いですのでお気をつけを』
と、主が運んできたのは
『なに?なんだこれは。苺に柘榴に洋梨か。
熱くないではないか。貴様、謀りおったな。』
Kenne助が戸惑ったのも無理はない。
このような風体の器では騙されるのも仕方がないというもの。
それを見事に逆手に取られた形となった。
『主、できるな、おぬし』
『はっ』
『ときに何故ライムの身を入れぬ。』
『本日のライムはいささか固かった故に絞るだけに留めましてでございます。』
その後、先の日本酒も回ってきたのか
すっかりと上機嫌となKenne助は
陣布伊豆へと移り
仕上げに義蕪村を飲むパターンをやや変更し
最後の義蕪村を我流不洲鳥居夢に切り替え
宿へと向かった。
帰るときは的士である。
的士は贅沢である。
だからこそ
『偉くなったものだぜ。』
そして
『つらい旅だぜ。』
と、一度も動かないメーターを眺めつつ呟くのであった。
『しかし、あの主。体脂肪率が5とか言ってやがったな。
ふとっちょも仙台なら、5も仙台か。
仙台、懐がふけぇや。』
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